なんて言ったか覚えてる?


雲行きはすでに怪しい。 

そして避けられない。


 「あの時、私がなんて言ったか覚えてる?!」

微かに首を右に傾けて、僕を睨みつける彼女はもう決して止まらないだろう。


 「そもそも私がなぜ怒ってるか、わかってるの?」

 もう何を言っても無駄な領域に突入したようだ。

 どんな言葉を返しても、どのみち致死率100%。

 きっと、こんな言葉を投げつけられた時点で確定死亡なのだ。 

こうならないように、常日頃、注意深く接するしかないのだろうか。


 「僕は僕なりに君のことを分かっているつもりだし、分かろうっていつも努力してるつもりだよ。 でも、ごめんね。きっと僕が全く至らなかったよね。でもね、僕はそんなに賢くないんだよ。何が君をそんなに悲しくさせるのか、ストレートに言ってもらえた方がわかりやすいし、 その方が話しも早いんじゃないかなって思うんだ。ズバリ言ってくれないかな?君に対して、どんな無礼をしちゃったのかさ」


とりあえず、思いつく誠実のすべてをかき集めてみたけど、これはきっと悪い例。 

焼け石に水どころか、たっぷりの油を火に注いで、華やかに燃え上がる準備を整えたのだ。


 「いつも私の気持ちに気づいてくれないのね。 前もこういうことあったよね?!」 

さらに過去の過ちを再提出という、マイナス300点の追加を頂いた。


 「おれ、きっとそうゆうとこにも気づけない病気みたいなものなんだと思うんだよよね。 だからさ、何について気分を害したのか、改めて教えてくれないかな?」  


追い打ちをかけてしまったか。

凶と出るか、 許してもらえるのだろうか?

いつもは全く耳に届かない時計の秒針の音が、 審判を待つカウントダウンよろしく不気味に響く。 


きっとこんな時は本当は 「ごめんね、許して」って、そっとキスなんだ。  

さらにぐうの音も出ないよう、息の根を止めるために 「今日の夜は泣くまで満足させるからさ☆」 なんて言ったっていいはずだ。

 

けど繰り返すばかりの僕。

 「いつの話について怒ってるの?」

 「どの言葉がいけなかったのかな」 

「どうすればそんな気分にならないのか教えてほしい」 

「具体例をあげて」 

「どんな時に頭にくるの?」 


許してほしい。 

許されたい。 

懇願の嵐。 

解放してくれ、お願い、神さま!    

Kotonoha Factory

電子書籍の出版社「ことのは出版」の代表です。情報発信やお祭り騒ぎ、おしゃれするコトがだいすき。

0コメント

  • 1000 / 1000